亡霊

義務感に変わる公然の秘密。紫色のものばかり集める。お腹の中に飛んでいる蝶々。空ける瓶。繋いでおいてくれなくちゃ、別のところに行ってしまうのに。

他人の悪意を汲み取れるようになるのが大人になったということ、

始まりそうで始まらなかった話が幾つもあった、今度こそ、正真正銘の、本当のさよなら。この気持ちが終わった時に飲もうと冷蔵庫に入れ、そのままにしていたライブハウスの缶ジュースを、今日飲んだ。

終わりなら早く殺して、たった1ヶ月前の自分を羨ましく恨む。考えることと想うことは別物で、最近は想うことばかりしている。しあわせでなくとも笑うことはできる。思ったより傷付いて、思ったより好きだったと知る。煙で巻く、いつも探していた匂いを。あの日の私を何度もナイフで刺して、あの頃の私の顔を何度も殴って、あの時の指先を、視線を、いつだって忘れられない。

四月の囚人。世界一うつくしかった海や朝はもう息をせず、私が忘れれば永劫に失くなる。いつか雨宿りをした、ここの坂道からランドマークが見えるなんて知らなかった、君をなくしたから知ったの。団地と朝を。もう1人で乗る始発。夢と魔法の国で、君の夢と魔法は完全に解けた。嫌いになることすら許されないんだね。

たまに思い出す。親指の爪。だけ。ごみ箱の中のメモ。そういうので駄目になる。熱を出して期待する。デジャヴ。心臓は左にある。

すべて終わりにしたい。でも日々の蛇は尾を咥える。どうでもよくなりたい。君のこと早く。海の近い街。高速道路。歩く。嫌いだよ。それ以上に。幸せは身体に悪い。残ってる破片のこと、考えもしないんだろう。