19-20

海がきこえる。遠くの方まで澄み渡る夜とミルク。もう無いんだよって、そろそろわかって、巻き戻すのをやめる。あいまい。それは期待と呪い。瘡蓋を剥がし続ける。同じ感情をいつか。

飛び降り自殺の夜に吹く風は生温かった。コンビニには何でもあって何にもない。幸せになるのが得意な人。咳き込む生活。夜明けが見たいからまた今日も眠らない。

死んだ顔をした人を好きになって、踊りたい。冷めたカップの中身。フィルムの目配せ。バターカップ。

ただ春が好きなだけだった。3月の靄を、少し寒い夜を、それだけ。また春が来れば特別でないとわかる。墓を掘り起こして、また新たな墓標をたてるような作業。全てが踊りになる。全ての感情を食べる。また味わう。エンタメ。

人の考えていることは一生わからない。究極のナルシズム、八千代の果て 八千代の果て 自分のことを嫌いでいる限り、君のことを好きでいられます。わからないけどそれでもわかりたいと思う時、それが特別で、鈍い痛み。

終電後の都庁前、新宿が静かなとき、あの煙草。助けを切に望んで、でもその実信頼していない。ささくれはこんなに痛いものだったか、人はこんなに簡単に別れていくのか、いつまで世界を思い通りにしようとしているのか、

確実に変わった地点から

失っている。

自分の死体をアスファルトに引き摺って街を歩き回るような日、死体の齢は移り変わる。ゆるさないこと、ゆるせたこと、できるようになったこと。究極まで突き詰めた感情は透明になる。痛みや怒りや悲しみを全て食べる。

可哀想で愚かで可愛い私へ。許せることが増えた。人を好きになること、信じること、始めたばかりだから失敗するのか、ゆるすこと。忘れていた。いつまで考えることをやめれば、開けるようになった振りをすれば、身体がバラバラにならずに済むのだろうか。早く死にたい。死にたいと言い続けて、永く生きたいと思った時になって死ねばいい。それまでは支払い続けるだけ。

亡霊

義務感に変わる公然の秘密。紫色のものばかり集める。お腹の中に飛んでいる蝶々。空ける瓶。繋いでおいてくれなくちゃ、別のところに行ってしまうのに。

他人の悪意を汲み取れるようになるのが大人になったということ、

始まりそうで始まらなかった話が幾つもあった、今度こそ、正真正銘の、本当のさよなら。この気持ちが終わった時に飲もうと冷蔵庫に入れ、そのままにしていたライブハウスの缶ジュースを、今日飲んだ。

終わりなら早く殺して、たった1ヶ月前の自分を羨ましく恨む。考えることと想うことは別物で、最近は想うことばかりしている。しあわせでなくとも笑うことはできる。思ったより傷付いて、思ったより好きだったと知る。煙で巻く、いつも探していた匂いを。あの日の私を何度もナイフで刺して、あの頃の私の顔を何度も殴って、あの時の指先を、視線を、いつだって忘れられない。

四月の囚人。世界一うつくしかった海や朝はもう息をせず、私が忘れれば永劫に失くなる。いつか雨宿りをした、ここの坂道からランドマークが見えるなんて知らなかった、君をなくしたから知ったの。団地と朝を。もう1人で乗る始発。夢と魔法の国で、君の夢と魔法は完全に解けた。嫌いになることすら許されないんだね。

たまに思い出す。親指の爪。だけ。ごみ箱の中のメモ。そういうので駄目になる。熱を出して期待する。デジャヴ。心臓は左にある。

すべて終わりにしたい。でも日々の蛇は尾を咥える。どうでもよくなりたい。君のこと早く。海の近い街。高速道路。歩く。嫌いだよ。それ以上に。幸せは身体に悪い。残ってる破片のこと、考えもしないんだろう。

反芻

午前4時の発信。記憶を辿り髪を喰む。臥せた私の上に私が重なっていく、そうして1ミリも動けない。全ての物語で羊は彷徨っている。本当の自分なんてどこにもいないし、どこにでもいるのに、何を探しているの。

時が過ぎれば薄れゆくなにもかも。または唇を忘れないうちに。相反する関係。の糸。無意識に残す記録。反芻。私だけが残っている部屋。誰にでも同じように近ければ、ずれてる人間として許されるのだろうか。ずれてる。私だけが共感できない音楽。彼女は無関心より嫌われる方がマシだと言う。独占の契約、欲を恋愛という言葉で覆う。私だけが共感できない話。邦ロック。

どこにも居場所がないということは、どこかしこも居場所であるということ。取り戻せないから美しく見えるなんて悔しいね。内向的傾向が弱まって寂しい人間になった。雨上がりの夜は人間には冷たい、幽霊の体温。エスプレッソマシンの空吹かしの匂い。また零すミルク。

可愛いという言葉で殺される何か。頬。一瞬だけでも受け入れてくれた左手。7019回の中でいちばんきれいなあさ。振り返ってきらきらしていた、iPhoneのフラッシュとか。君の夢に出る私が苦しいほど輝いていたらいいのに。そうしてまた海の音が聴きたくなる。

知らない人と2人で渡る赤信号。インターチェンジを通る時はいつでも。コンビニに欲しいものは売っていない。呪文を自分に言い聞かせる。習慣と惰性に変わる。君を好きでいること。義務のように思えてくる。

あの頃、命を削って生きていた。踊っていた。食べることは生きることです。はい、でも、食べる度に死に近づいている気がするのです。

この幸せに慣れたくない。走れない靴、で井の頭線に乗る、雨の日曜。台風だったあの人の誕生日を思い出す。道に転がっていた鼠の死体。ひとりで歩く。歩くときはいつも孤独ではない？写真をたくさん撮るようになったから、君の寿命を縮めているかもしれない。過去になって取り戻せないやわらかな春の光が苛立たしい。時の流れが早いことに気付かないふりをしても意味がない。

火傷した掌。靴擦れ。枯れた声。私が持っている全て。荒れた部屋に似合わない洒落た匂い。素敵な贈り物。同じものを食べ続ける。同じゴミが積み重なる。執着と未練だけが私を動かす。たくさんのことを先送りにする。誰にも見せられない日常が染み込んだベッド。捨てられなかった欲動たち。哲学で片付け。誰かを信じられないのは変わらなかった。

前を向けない。

私だけが思い出し続けている気がする。いつも。私だけがまだ、ここに残っている。反芻。

東京

狭い世界の中で話をしている。高いビルの隙間で糸を縫う。騙す、催眠で自分を。愛に名前をつけない。気持ち悪いと言う、から白目を剥いて答える。私が否定する全てを、森の中に埋めてきた。どこにも帰らない、幽霊になってまちを歩き回る。

君のホームタウンで踊る。駅ビルのホール。紫の耳。海を見たい。死人の月見。坂の中心の檜にて、ベランダと、大きな窓、あの部屋にいつか入ることはできるのだろうか。

句点句読点を正しく入れる癖に影響されて悔しい。要素で好きと言うようになったら終わり。馬鹿な夢に酔うも一興、但し憂鬱が後を付き纏う。

私の愛は肉塊だから、いつでも潰せる。愛に値する人間になるには、どうしたらいいのだろう。A+評価、合格通知、表彰状、拍手、ではないもの

無性に誰かを抱きしめたくなる不安が、浮遊か、緊張、灰色の妄想。全てを棄てて出家したくなる日、ロボトミーで正しくして。過ぎてから幸せだったと、愛していたと気付きたい。本当に？

一歩踏む度に歯が震える、ふらつく、

あの頃、愛をしていた。憎しみと同じだった。共感に歓びを感じないで。腐ってゆくから。冷めかけのココアやミルクティのような言葉を書くねと言われたこと、今日、冷めたココアを冷蔵庫に入れて、再び咀嚼したんだ。

美しいと思える景色を見るために生きている。その一瞬を思い出して、まだ見ぬ一瞬を探して、生きている。

わたしのかおは、たぶん汚い。鏡と反射するアクリル。埋没するモラトリアム。生活に擬態している。時に綻びが顔を出す。ずれてる、歩き方を忘れる、欠けてる、息の仕方を忘れる、何を着て、どんな顔をするのか、その時ドーナツを3つ食べて死に至る。

手に入れた途端価値を失う何もかも、全ての収束帯はコンプレックス。痣、蝶々のタトゥー、折れた爪、狐色の髪、あとはもう消えるだけの日々。

未練が薄まることが、忘れることが、良いことなのか分からないまま日々を過ごす。

繋ぎとめていたいもの。気持ちが死ぬ迄は残しておく缶ジュース。止める。深入りする前に。小さな後悔が積み重なった。トラクターになって僕を押し潰す。恋だと勘違うことができない。

エアコンしか対話する相手がいない部屋、扇風機が見つめてくる部屋、狂うことと本質に近づくことは同じだから。

君に似ている人はきっとここにたくさんいる。同じ車両に、同じビルに。でも君は、そこにしかいない。誰かと似ていて、誰とも似ていないことは当然ではない。

あなたが生きるこの街は。

東京

empty

空の部屋。凍った道、開けて目覚める。僕らは忘れる。ここにしかないと思っていたものは割とどこにでもあった。大きな飛行機が3分毎に飛ぶ。東京は、星が。

自由な監獄。別れ、または死の匂いのする4月。卵が生まれてスープみたいに。あの人が家族でやりたかったこと。

遊ぶために生きている、生きるために遊んでいる？なにも無いの、埋め合わせで棘に身を委ねる。不感症、それなりの娯楽で中途半端なたのしいひ。浮腫んだシーツ。花は切られた瞬間死んでいるのに、何を握りしめているの。

幸せの蚕。君の神様になる権利を金で買う。テレビを捨てて意味も消えた。何も思わない度に軽薄さを責められる。

旗を掲げること。剥がれた皮膚。生み出す痛み。何も出てこない。もので溢れた空の頭。

悲しみが鏡に映る。溶けたアイスクリーム、クローン羊。縛られたまま鳴く鳥が薬を飲んで飛んでく冬。

思い出す。思い出すことでしか息を吹き返さないもの。埃。埃の味。簡単には理解できないものを見ていたい。

扇風機と目が合って、途轍もない恐怖に襲われる。蝉の死骸を見た月曜日。欠片だけ握りしめて一部分だけ愛して君に逢いに行く。分解される身体と便器。スイッチが3秒間だけonになる。木の車輪が音を立てて回る坂道。死にそうに死にそうだと言うのはダサい。

使用期限切れ間際のインスタントカメラ。溶けて指についたチョコレート。手を洗って流す。こびりついた古い愛、憂愁とか。ちょっとのセンチメンタルで消化される事象。石鹸で洗い流す。

死に後れの蝉、落下するエレベーター、頭痛、狭い部屋のベッドシーツ。好きなタイプなんていいから君の好きな映画を教えて。いつの間にか牛乳を零さず注げるようになったけれど、まだ大事なことを取りこぼしてしまう。

何年も着ているコートと、何ヶ月も洗っていない布団と、何週間も溜めているプラスチックと、何日も死んでいる私が並ぶ部屋、季節が巡って腐っていく、海苔と共に。水と牛乳と薬だけ入った冷蔵庫。絵筆もピックも駄目で、使える道具は言葉だけだった。15のときに聴いていた音楽。

積み重なる窓、ゆるさずにわすれる、被害者、意味付ける岩。天気の話をしないよう白いラットを口に入れておく。夢は手作り。空の部屋を繰り返し、いつか次の部屋がなくなるときに。空になることを喜ばない。

⇄

温い膜の中でじたばたしている。液体と固体の間で浮遊している。圧迫する何かが私をソファに縛り付けている。

クリスマスソングを聴いて、やさしい冬の歌だけ聴いて、永遠に暖炉の前でうずくまっていたい。いつの間にか全部過ぎていて気持ち悪い。

君の腕に抱かれて木を登る。シンデレラの劇。玄関が3つある新しい家。全ては母親につづくとわかる。怖い顔して、向こうを見詰めないで。踊る人の写真、北欧の窓。海の見えるホテルの夢。

古本にキスはできない。現実に近づくほど想像力の欠如を知る。君のつらさは知らないし君に私のつらさはわからない。わかってはいけないのがやさしさなのに、冷たいと言う。大きく欠けた爪。君は他人。やさしい他人。

金色と薄緑色の天国は遠く 灰色の物と新しい海が広がり ドビュッシーが重なる

砂嵐の窓 階段の天使 ドアを開け ゆく河の流れは絶えずして 天井や壁に散るプリズム的光 死の滝壺

たゆたうことに愛はない。馬鹿になったことに異論はない。

わからないんだ、何も。怖い子。ユニットバスを好きになる努力。ミルクティーの作り方。嘘みたいな別れと慣れ。あの時の3月の家具屋。それから正しい場所へ辿り着いたのだろうか。勝手に決めないで。でも君の求めるものは永遠に手に入らない。

地球の地縛霊になって歩き回っている。悲しいの、ずっと、忘れてるだけ。私だけ分からない死の臭い。自分の臭い。嘘の風が吹く。嘘みたいな、嘘の、偽の風が。突風が。許さないで、私を、絶対に。

懐疑で震える。こっちに天秤が傾いたら負け。疎遠は防衛。期待をしない、傷つかない、何も始まらない。消去法でない愛を。骸骨と見つめあう、だけの。電話も手紙もない。

盥に水を張って眺めている。竜を吐き出す。殺して欲しいと思うとき、肉体を感じることが出来る。不安は自由の目眩、静かに沈む、シンク、神田川。後悔しか残らない。

能動的に流れる水、胴体や花。トルソー。森の中のガラスに、トタンの印象派に。

水を注ぐ。

でも、愛は注がない。

swallow a butterfly

波を集める、コンクリートの上を這う、人の映像。意味の無いことを繰り返してきた。徒労。時と、老いるということ。頭蓋骨の内から見上げる銃痕、天窓。燃える車。

9歳のとき見た目玉の取れる夢。バレエ教室のスタジオ。クリスマスプレゼントの、人形の部屋。小さな靴。憧れたのは大きな家。髪を切って顔にペンで塗ってしまった。

正しい、正しい、正しいと思うことを選んでいく。自分の言葉で話せるようになりたい。水が流れる。水が溢れる。三月の瞑想。

資本主義の餌食。僕らは概念を愛す。黒い犬を飼い慣らす、部屋の隅の角を抱きしめている、たまに血を出せば出血多量で死ぬことは無いと信じて泥濘を引き出す。

夏の痣、腕に印した紫の花が、まだ消えないことを。汚い網の中で偽物でも綺麗だったきらきらの紙。硬いワイシャツに触れたときの痛み。拒絶。呑み込んでしまったの、君は。嘘みたいなことを綺麗に語るから。夢をみたい、なら全てを信じること、清さも濁りも。

雲の隙間に差すのは天国からの光か、狭い街、名前をつけないで、ラベルを貼らないで。誰にも分からない話をしよう、なんて、もう言わない。君の孤独の先にいる鳥。ケチャップはやめよう、寂しくなるから。

月を愛すように君を眺める。花とは結婚できない。ただの円で、君の猫になる。愛ならば知っているんだと言う音。森の中、湖のほとり、翳る人がそのまま再生画面になる。湿った石柱の裏でつないで。君が説いたこと、全部。

変わっていくから誰とも友だちになれない。潰れた顔、わずかに浮遊している感覚、わたしも忘れるもの。眠りたくない。思い出すことが良いことかわからない。首を絞められる夢。明日と自己を嫌悪した15の夜。から。

見窄らしい自分に気づいて、飽和した欲に気づいて、全てをやめなければいけないと言い聞かす。これで最後を何度も繰り返す。366回目。あの頃のわたしが取りこぼしてきたものにひとつひとつ傷ついて、抱いてあげて。海の見えない街。日差しに成りたい。

どこかに行きたい、どこにも行けない、惑星の表面を彷徨う精神が、なにもできない、汚くなければ人間ではないし。水色ばかり好きでごめん。愛しているその下で劣等感が育っているのではないか、わたしが歴史を見るとき歴史はわたしを見ているだろうか、たった数十年をすべてだと思う。激情と凪のどちらをも求む。

おとことおんながいたって何も無い。洗脳。すべての意思が自分の物で有り得ないことを偶に忘れる。愛してほしい、は殺してほしいと似ている。時間ばかり過ぎる。真っ新な紙を折る、何もせず生きることはできない。自分より小さな命を可愛がる。普通なんてどこにもないこと、小学生の頃から知っていた。

蝶を呑み込む。首の、喉の上。

また忘れる。

生きることを受け入れる。